2016/03/07

20150809 甲斐駒ケ岳


引き続き半年以上前の記憶を辿る旅。
青と白のコントラストが眩しい「南アルプスの貴公子」、甲斐駒ケ岳へ。

* * *

前日に寝不足で登った仙丈ヶ岳の疲れもあり、朝は遅かった。
ただ、よく眠った気がする。おかげで体調は上々。


準備を済ませて、長衛小屋を出たのはなんと8:20。
朝のバスを使って日帰りで来る人よりもさらに一周くらい遅れたスタート。

コースタイムを確認し、「最終バスまでには時間に余裕がある」と思い込んでいた。この時は。

小屋からは仙水峠を経由するルートで。
8時を過ぎているので当然気温は上がり始めている。暑さに弱い体質なのにとんだ失態だ。

仙水峠までは特に展望もない樹林帯。日差しは和らぐが、風が抜けないので蒸し暑い。

仙水峠に近づくに連れ、ゴロゴロとした大きな岩が増えてくる。岩の上を跳ねるように歩く。
こんなとき、ローカットシューズは軽快で楽だ。

視界の先には摩利支天の天頂部が頭を覗かせる。

9:30に仙酔峠に到着。樹木の向こう側に甲斐駒ケ岳がその全貌を表す。
まだまだ遠いな、と思いながら地図でコースタイムを確認する。

「あれ?」

重大な事実に気がつく。昨日、夜寝る前に計算したコースタイムが間違っていたのだ。
正確に言うと、ルート上にある駒津峰のコースポイントを甲斐駒ケ岳の山頂と読み違えていた。

このままだとコースタイム通りに休憩なしで歩いてもあまり余裕がない。
しかもシェルターは設営したまま。撤収作業の時間も考えなくてはならない。

状況を整理する。

  • 最終バスは16:00。残された時間は6時間半。
  • 現在地から山頂までのコースタイムは3時間。
  • 甲斐駒ケ岳山頂からバスが発着する北沢峠までのコースタイムは3時間5分。
  • 休憩なしですべてコースタイム通りに進んだ場合、撤収にかけられる時間は25分。
  • 登りはコースタイムより遅いこともたまにある。下りは基本的に早い。

しばし逡巡のあと、結論をまとめる。
シェルターの撤収を15分と見積もり、余裕も確保して12:30になった時点で下山を開始する。
ただし「決して無理はしない」 というのをルールに先へ進む。

下山でコースタイムを上回ることがあれば、何か不調が現れているということなので潔く延泊すれば良い。

仙水峠からはそれまでと打って変わって急な登りになる。暑さも相まってなかなか辛い。
ただ時折振り返るとアサヨ峰とその奥に鳳凰三山・北岳が見えて元気づけられる。

駒津峰まではあとわずか。時間的には予定通り進んでいる。水分や栄養の補給も怠っていない。
しかしその先に見える甲斐駒ケ岳はまだずいぶん遠いように見える…。



駒津峰に到着。ここで北沢峠~双児山のルートと合流するため人が一気に増える。
ゆっくり休憩をしたいところだが、写真だけ撮って先に進むことにする。

見上げる甲斐駒ケ岳までは1時間半。ここから少しだけ下ってまた登り返す。
山頂付近に少しガスがかかり始めたのが気にかかる。

鞍部から山頂までは登り一辺倒。いよいよ甲斐駒ケ岳本体に足を掛けたという気持ちになる。
途中、直登ルート(破線)と迂回ルートに分岐する。
破線は道迷いの想定ではなく、全身を使う岩場であることと落石の危険性があるからだろう。

身軽なわれわれは直登ルートを選択。落石に注意しながらひょいひょいと登っていく。
このセクションでかなりコースタイムを稼ぐことが出来た。

振り返るとなかなか高度感がある。直登ルートでも特に恐い(滑ったら死ぬ)と思う箇所は無かった。
この辺は主観によるところが大きいので、あくまで参考だが。

心配していたガスも晴れてきて素晴らしい展望。

駒津峰から1時間で山頂に到着。

ふと想起される記憶。あれは4年前くらいだったか・・・。
白州の日向山から間近に見た甲斐駒ケ岳のスケールの大きさに度肝を抜かれた。

今そこに立っていると思うと感慨深いものだ。

登山をやっていると訪れる「あの時あそこから見たあの山に立っている」瞬間、自分が主人公のRPGみたいだなと思う。
「あの時あんなに頼もしかったパパスの強さを、気付いたら自分は超えていた」のだ。

最初はセオリーに沿って山のレベルを上げていくけど、ある時点から選択の自由度が上がるというところも似ている。
甲斐駒ケ岳はずいぶんと後回しにしたもんだ。もっと辛い山、長いルート、遠い場所もたくさん行ったのに。
これで中央道から、中央線から見上げて「次こそは行くか」と思うことも無くなるのだろう。

少し時間の余裕が出たので、行動食を補給しながら景色を楽しむ。
何度も写真で見たこの光景も。

10分ほどしたら下山開始。

下りは迂回ルートで。砂礫の道なのでここは勢いに任せて一気に下る。
山頂を離れると同時に、ガスが辺りを覆い始めた。

登ってくる人には悪いが、本当にいいタイミングで山頂に居合わせることが出来たもんだ。
満足に休憩も取らず、頑張って登ってきた甲斐があった。

展望が悪くなってきたこともあり、ここから仙水峠まではほぼ写真も撮らず下りに集中した。

13:40、仙水峠に到着。ここで時間を見てもうこれ以上急ぐ必要がないことを確認。
ここからはのんびりと最後の歩きを楽しんだ。

結局下りで1時間コースタイムを短縮し、長衛小屋にはバスの出発まで1時間半以上の余裕を残して到着した。

「どうせならもう少しゆっくりすれば良かった」と思ったがそれも結果論。
途中の判断も余裕面から見ると決して賢明ではないので、「うまくいったのは運が良かったのだ」と思わなくては・・・。

兎にも角にも、2日間の南アルプスの旅は天気にも恵まれて大満足に終わった。
何度も書いてきたように、この旅は「自分が山の経験を積む過程で置いてきぼりにしてきたもの」を回収する、
そんな側面が強い旅だった。

まだ置いてきぼりにしてきた山がたくさんある。次は去年、北アルプスに残して来たあの山だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿