2016/06/14

20160522 中倉尾根

好展望の尾根を歩いて、孤高のブナに会いに行く。

* * *

あれは確か3,4年くらい前のこと。
どこで見たのかすらも覚えていないが、素晴らしい景色が広がる稜線の写真を目にした。
写真に添えられていた注釈には「中倉山・沢入山」と記されていた。

その場で山の名前だけをメモに書き記したが、月日と共に記憶から消えていた。

しばらく後、メモを見返すと記されていた山名に記憶が蘇り、少し調べてみた。

山の地図には載っていない山だということ。
足尾にある山だということ。
そして、足尾と聞いて真っ先に思い出す、歴史の授業で学んだ出来事と関係があること。

この時はもう夏だったので少し調べただけで、「涼しくなったら行こう」と思っていた。

それからどれだけ経っただろうか。何年か越しにやっと、向かうことに決めた。

後回しにしている間に、稜線にある一本のブナの記事が読売新聞に掲載されたらしい。
足尾の煙害に耐えた「孤高のブナ」。

その影響もあってか、あまり有名だとは思えないこの山にも今は人が増えたようだ。

スタートは銅親水公園から。
山の地図に載っていないとは言っても、今ではネットを探せば情報はたくさん出てくる。
ヤマレコで見つけた記録を地形図に落として、印刷して持っていった。

橋を渡り、砂防堰堤を目指す。砂防堰堤の奥にある階段がコースの入り口だ。

堰堤に上がって左に進むと車止めの鎖のようなゲートがあるので、そこを越えて橋を渡る。
橋を降りたら向かって左側に退屈な林道を行く。

30分ほど林道を歩くと、登山道の入り口に到着。
ケルンとピンクテープがあるので、右側を注意して見ていればまず見逃さないのではと思う。

新緑の登山道を行く。道は踏まれていて明瞭だし、ピンクテープもある。
ところどころ補助ロープまで掛けられていて、道標が無いことを除けば普通の登山道とあまり変わらない。

写真は平坦なとこばかりで撮っているので伝わらないと思うが、稜線までは結構な急登だ。
さらさらした土で足場が安定しないこともあり、結構疲れた。

一度稜線に乗った後も、少しの間登りが続く。
最後、主稜線に入る手前で直登する踏み跡と右(東)から回り込む踏み跡に別れる。
個人的には展望の良い回り込むルートをお勧めしたい。

登山口から1時間くらいで展望が開ける。

主稜線に出た。見事な稜線だ。こんなに爽快な景色は久々かもしれない。

稜線に出たら、5分もしないうちに中倉山のピークに到着。
そして中倉山から孤高のブナまでは200メートル程度。これまた5分もかからない。
稜線に出てから10分足らずで次から次へとハイライトが訪れる。

「孤高のブナ」



孤高のブナから振り返る。
写真でもわかる通り稜線の片側(北側)だけが剥げている。
煙害を免れた稜線のすぐ南側は木々が茂っており、より対照的だ。

そういえば、まだ5月にも関わらず大量の蝉が鳴いていた。耳をつんざく様な大音量。
しかも人に慣れていないのか、近くを通過するとこちらに向けて飛んで来るのだ。

樹木の近くを通過する度に「頼むから飛んでこないでくれ」と祈っては、蝉の突進を受ける。
その繰り返しだった。

孤高のブナで引き返す人が多かったようだが、先の沢入山に向かう。

この日は5月なのに30℃を超える気温で、正直もう止めようとも思った。
しかし、「もう一度来るためにはあの歩きづらい急登を登るのか」と思い直して先に進む。

沢入山の手前にはニセピークがある。
中倉山辺りからだとこのピークが沢入山だと疑わないのだが、沢入山はさらに奥。

写真はニセピークの辺りから来た道を振り返った1枚。
山深さも感じられて素晴らしい展望。


ニセピークから向かう先。中央に見える出っ張りが沢入山。
尾根を伝って庚申山まで歩けるようだ。

庚申山より先は鋸尾根で皇海山にも繋げることが出来る。



沢入山に近づくに連れ荒廃した景色になっていく。
ふと、あれだけ鳴いていた蝉の鳴き声がピタっと止んでいることに気が付き、背筋が凍った。

沢入山に到着。頂上にはツツジも少し咲いていて、気持ちも和らぐ。
孤高のブナから沢入山までは、1時間弱くらい。

沢入山から先も稜線はまだ続くが、今日はここで終わり。

来た道を引き返す。




そういえば、展望だけでなくツツジもかなり綺麗だった。

ミツバツツジ。

ヤマツツジ。

シロヤシオも。

帰りは急坂を一気に下って登山口まで。
柔らかい土に足を取られ、何度が転びそうになった。

帰りに銅親水公園で会った役場の職員の方によると、今年は足尾の街でも熊が出たらしい。
この山も増えたとは言え決して人の多い山ではないので、充分に注意した方が良いだろう。

気持ちのよい好展望の稜線が出来た背景にある足尾の歴史を思うと、手放しで絶賛することは出来ない。
ただ個人的には、数年前に見た景色をこの目で確かめることが出来て満足の行く山行だった。

地図が無いので、万人にお勧め出来る場所ではない。
ただ首都圏からもそんなに遠くなく、2000mに満たない標高でこの稜線にこの展望。

数年前に見たあの写真のように、このBlogの写真が誰かが行くきっかけになれば良いなと思う。

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